30代後半ぐらいからなんだか体調が良くない、不安定になる、気分のアップダウンが出る、などの「ゆらぎ」を感じられる方もられるでしょう。プレ更年期(30代~40代)、や更年期(40代~50代)に感じるそれぞれの症状と対策をご紹介していきます。
更年期障害はなぜ起こるか
規則的であった月経周期が閉経を迎える年齢は、個人差はありますが50歳前後で閉経する人が多く、この閉経の時期をはさんだ前後数年ずつの約10年間(一般的に45~55歳頃)を更年期といいます。
卵巣の働きが衰え、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減少することでホルモンのバランスが崩れ、月経周期の乱れやエストロゲンの欠乏により心身にさまざまな不調があらわれことを「更年期障害」といいます。
更年期障害のピークはいつか
おおむね45~55歳くらいが更年期の対象年齢といわれていますが、最近は、早い人は、30歳代後半から更年期の症状が現れます。 女性は、50歳前半に更年期の症状がピークになるといわれています。(日本医師会) ただ、更年期障害の期間や症状、深刻さは個人差が大きいため、長くつらい思いをする人も多くおられ、更年期障害に伴う退職は45万人とNHKで試算されています。
漢方医学における更年期の考え方
婦人科でも更年期障害に対して漢方を処方されることは多いです。漢方は更年期の時期に出てくる不定愁訴に非常に相性が良く、私も良く活用しています。
かかりつけの婦人科、更年期外来、漢方薬局などで是非ご相談なさってください。
今日は基本的な考え方や良く処方される漢方をご紹介します。
漢方では、カラダは「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」の3つの柱で支えられていると考えられています。
この気・血・水の3つの柱が太く頑丈であれば、風が吹こうが嵐が来ようが、揺らぐことはありません。
しかし、もしこの柱が傾いていたり、弱っていると、支障が出てきます。
3つの柱の状態は一人一人違います。この違いが体質の違いです。柱の状態によって、更年期という嵐に耐えられるかどうかが決まります。
更年期の女性のカラダは“気→血→水”の順に柱が崩れやすいと考えられています。
そのため個人差はありますが、更年期障害の症状もまた“気の不調→血の不調→水の不調”の順に変化しやすいと言われています。
(Source:クラシエの漢方)
加齢に伴って起こる更年期障害は、漢方では「腎虚(じんきょ)」によるものと考えられます。
女性の場合は、閉経前後に急激に起こる「腎虚」の影響で、「気」の流れが逆行している状態の「気逆(きぎゃく)」を伴いやすいのが特徴です。
冷え・のぼせ、突然の発汗、動悸、イライラなどの更年期によくみられる症状はこの「気逆」による症状です。
「イライラする」「汗をかく」で最初に更年期かも?と気づかれる方が多いのではないでしょうか?
①更年期障害の「ホットフラッシュ」や「イライラ」を軽くする方法
ホットフラッシュやイライラで婦人科で良く処方されるのが
「加味逍遙散」
になります。
加味逍遙散:体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症 (引用 漢方セラピー)
また実際私は更年期で睡眠が浅くなったときに服用したところ、個人的に効果を感じました。イライラが増えてしまうこの時期、加味逍遙散はよく処方される漢方になります。
「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」
ホットフラッシュなどで、顔や手足が強くほてり汗ばむ方には上記の漢方が利用されることがありますが、婦人科のほとんどでは加味逍遙散の処方が多くなります。
②更年期障害の「冷え」「冷えのぼせ」を軽くする方法
足は冷えるが上半身はのぼせる方の更年期障害によく処方されるのが
「桂枝茯苓丸」
です。
「気」や「血」のめぐりが悪く、滞った状態で上半身がのぼせて、下半身が冷える場合におすすめの漢方薬です。
のぼせと冷えが同時に起こるのは、「血」の流れが滞るとともに「気」の流れが乱れ、体内で熱がこもってしまうからだと考えられています。
熱は上へのぼるため、顔はのぼせやすいのに足が冷えるといった状態になります。
「桂枝茯苓丸」は、そのような方の症状の改善に適しています。このほか、生理痛や生理周期などに伴い悪化するニキビにも使われます。(引用:ツムラ)
③更年期障害の「めまい」を軽くする方法
まず、「めまい」を訴える方は、耳鼻咽喉科や脳神経外科の診察を受けて、診断・治療をして頂く必要があります。
その他の病気の可能性を排除したうえで、更年期障害という判断になります。そのうえで利用されるのは漢方になります。
更年期障害に対する代表的な漢方薬である当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸も、めまいの改善に有用といわれています。
もし、めまいの改善効果が弱い時には、五苓散・苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯を併用します。
更年期障害の「動悸」を軽くする方法
動悸が頻発する、安静にしていてもドキドキする場合は、病院で診察を受けましょう。
かかりつけ医を受診する他、初診の場合は内科や循環器科を予約するのもおすすめです。
更年期障害以外の別の可能性を排除した上で対処しましょう。
「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」
不安神経症や対人恐怖症などによく使われる漢方薬です。
気を整え、鎮静してくれる生薬がしっかり配合されているため、不安感や恐怖感が強い、眠れないなど更年期の神経症に限らず、さまざまな神経症を改善します。
また動悸や不眠にも対応し、更年期に起こりやすい症状に幅広く対応します。比較的体格の良い人におすすめの漢方薬です。
更年期障害の「肩こり」を軽くする方法
更年期障害で見られる肩こり・頭痛・冷えなどは、血の滞りである“お血(おけつ)”によって生じる症状と考え、これを改善する生薬である“芍薬”や“牡丹皮”、“桃仁”などが含まれる漢方薬がよく処方されます。
更年期障害の「疲れ」「だるさ」を軽くする方法
生活習慣を整えていくことも同時に大事ですが、漢方では下記のような処方がされます。
この2つは私もよく処方してもらってのんでいます。
血や気の巡りを改善する「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」
胃腸の働きを整えて気を補う効果のある「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」
更年期障害の「吐き気」を軽くする方法
吐き気は、頭痛やめまいに伴って起こることの多い症状で、症状が重い場合は日常生活に支障をきたすこともあります。
東洋医学では、更年期の吐き気を「気・水」の異常と考えます。
更年期の吐き気を改善するには、自律神経の働きを安定させることが重要です
「気」を補い胃を温め、吐き気に効果的な「呉茱萸湯(ゴシュユトウ)」
喉のつかえやイライラが強い方は「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」
がオススメです。
⑧更年期障害の「耳鳴り」を軽くする方法
耳鳴りは、早期の耳鼻科での受診がおススメです。難聴の人の9割に耳鳴りがあるというほど、耳鳴りは難聴につながることがあるからです。
うちの母も更年期の時期に耳鳴りがあって、そのまま放置していたら今耳が聞こえにくくて
補聴器を使って生活をしています。
当時そういった知識があれば、と悔やまれます。
他方、耳鼻科での薬であまり効果がない場合は漢方を活用されることもおススメです。
「気」の巡りを改善して身体にこもった熱を解消する「柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)」
「血」を補い「水」の巡りを改善する「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」
などが効果的です。
⑨更年期障害の「しびれ」「こわばり」「関節の痛み」を軽くする方法
意外と知られてないのですが、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によってこういった症状が出てきます。
初期であればエクオールなどがおススメです。
また、
水分代謝を良くしながら炎症を抑え、熱や腫れ、痛みを改善する作用のある「越脾加朮湯(エッピカジュツトウ)」
水太り気味の方の水分代謝を改善し、余計な水分を排出する働きのある
「防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)」
などが処方される場合もあります。
⑩更年期障害の「胃腸の不調」を軽くする方法
胃腸が悪いのであれば、必ず胃腸の検査をしましょう。重篤な病気が隠れている場合もあります。
そして更年期の胃腸症状に漢方薬はよく使われています。
特に「六君子湯(りっくんしとう)」は、更年期女性に限らずさまざまな胃腸症状によく処方される薬。
FD(機能性ディスペプシア=胃カメラなどで異常が見つからないのに症状が出る病気)の治療薬としても位置づけられています。
神経性胃炎には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) 」などもよく処方されます。
生活習慣での軽減方法
更年期を乗り切るためには、生活習慣の見直しが大切です。ポイントは、十分な睡眠、運動、情報の統一化そして食事です。
・十分な睡眠
睡眠不足は症状を重くします。
体がほてって寝つきが悪い人は、氷枕などを利用すると寝つきがよくなる場合があります。
また、寝る直前にお風呂に入ると体がほてるので、寝る2時間くらい前までに入浴を済ませるようにしましょう。
夜にカフェインを含む飲み物をとると睡眠の妨げになります。午後以降、とくに夜はカフェインを含まない飲み物にするとよいでしょう。
・運動
運動で血行が良くなると、更年期症状の緩和が期待できます。楽しみながら続けられるウォーキング、ジョギング、ダンス、水泳など、ご自身に合った運動を選びましょう。
・情報の統一化
更年期には、ちょっと前のことも忘れてしまうことがあります。物忘れをするとそれを思い出すためストレスがたまり、イライラしてしまうことも。スケジュールや家庭の用事、体調、簡単な日記などを、すべて一つの手帳にまとめてみましょう。そうすると、行動のつながりを思い出しやすくなり、次に何をするかを考えられるようになって、イライラすることが減っていきます。
更年期障害を軽くする食べ物と避けたい食べ物
積極的にとりたい食べ物 ①オメガ3脂肪酸
まず、オメガ3脂肪酸(油分)の豊富な魚(サーモン、サバ、ニシン、イワシ)やナッツ、種子(特にチアシードとフラックスシード)を積極的に食事に取り入れましょう。
私は鯖缶やイワシの缶詰を活用したりしています。ナッツも無塩のものをおやつ代わりに食べています。
オメガ3脂肪酸は、情緒のコントロールに大事な役割を果たしており、気分のおちこみがホルモンの影響で起きている場合、これらの食品の摂取により症状が抑えられる可能性があります。
またオメガ3脂肪酸は女性ホルモン低減後に起こるコレステロールの上昇などを防ぐ効果もあると言われています。更年期→老年期に向けて必要なものとなりますので、積極的に摂りましょう。
食事でオメガ3脂肪酸を摂取するのがベストですが、サプリメントで、ということであれば、信用できる医療専門家にアドバイスをもらうがよいでしょう。
積極的に摂りたい栄養 ②植物性エストロゲン
植物性エストロゲンは、さまざまな種子、ナッツ、果物、大豆、オーツ麦、大麦、マメ科の植物そして、レッドクローバーなどのハーブのサプリメントにも含まれています。
研究によれば、植物性エストロゲンを摂ると、体内でエストロゲンが作られているように見せかけることができるので、更年期症状を緩和すると言われています。
こうした食べ物を食事で積極的に摂ることで、更年期症状が改善されたという声もあります。
実際製薬会社が「エクオール」のサプリメントを販売しています。多くの著名な産婦人科医が積極的な活用を促していますので、検討されても良いと思います。
閉経後は大豆および大豆製品を食べたほうがいいという説が一般的ですが、まだ議論の余地もあり、大豆が更年期に与える影響の研究もさまざま。
いくつかの研究では、多量に摂取した場合の影響については不明な点もあり、何事もほどほどに摂取したほうがよさそうです。
積極的に摂りたい栄養 ③骨を強化する食べ物
更年期には、十分なカルシウムとビタミンD、ビタミンK2を摂取することが重要です。
エストロゲンが減少すると、骨密度が下がり、骨粗しょう症(骨が折れやすくなる)になる危険性があります。
カルシウムは、乳製品、骨のある小魚、緑の葉野菜(ケール、ホウレンソウ、キャベツなど)、ナッツ、種子で摂取できます。
ビタミンDは適切なカルシウムの吸収にも必要です。
食事(卵、魚、肉)から摂取することもできますが、ほとんどは身体が日光に当たることで作られます。十分に日光浴ができない冬の間は特に、ビタミンDのサプリメントをお勧めします。
ビタミンK2は、カルシウムが体内の適切な場所に沈着するために非常に重要であり、肉、魚、卵やザワークラウト、納豆などの発酵食品に含まれています。
自分だけで取り組むだけでは頭うちに…そんな時に必要なこと
ここまでは結構自分一人で頑張ってやれるんですが、一人だけでは「頑張れない」時もありますし、家族の理解がないとイライラする時もあります。
そんな時にパートナーの助けを借りることはとても大きな助けになります。
現状を把握してもらうことで、サポートしてくれたり、時に応援してくれたりもします。
50代の幸福が80代の夫婦の幸福度に大きく影響する、という研究もありますので、是非パートナーにも自分が取り組んでいる「更年期」というプロジェクトに入ってもらいましょう。
そこでおススメなのが「よりそる」というサービスです。
日頃の体調を共有したり、お互いで更年期についての知識を学んだり、この時期互いにどんなサポートが必要なのかの情報を共有していくラインプログラムです。
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